チーム・バチスタの栄光(宝島社文庫)

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海堂 尊 (著)

 

心理的描写が面白かったので追加で書き記す。

前提として、心理学を日常で必要とする場面は説得心理読影らしい。

登場人物

田口公平

・東城大学医学部付属病院神経内科学教室講師、不定愁訴外来(通称「愚痴外来」)。

・その仕事と名前から「グッチー」「行灯」などとあだ名される。

・外科医としての適正があったが、血を見るのがいやだという理由で神経内科医となる。

・白鳥曰く、「パッシヴ・フェーズ」の純粋な使用者。白鳥曰く姫宮よりも優れているらしい。

・辛抱強く話を聞き続けるその手腕から、口コミで評判が広がり、来院する患者が多い。

・病院内では「出世競争から外れながら、大学には居座り続けている」という評価がある。

・40歳で、高階からは性格が素直過ぎるところを評価される。

白鳥圭輔

厚生労働省大臣官房秘書課付技官・医療過誤死関連中立的第三者機関設置推進準備室室長。

・通称「ロジカル・モンスター」、彼が通った後はぺんぺん草も生えないため、「火喰い鳥」などとも呼ばれる。

厚生労働省の問題児。

・田口からの第一印象は「ゴキブリ」。

・省内で追い出し同然の扱いを受けても、まったく懲りた様子がなく、もて余されて医療過誤死の中立的第三者機関設置プロジェクトを押し付けられる。

・医師免許も持っている。

・既婚者で2人の娘がいて、娘が飽きたたまごっちに夢中。

・「氷姫」と呼ばれる入省首席の姫宮という優秀な女性の部下がいるが、白鳥の評価は低い。

・「アクティブ・フェーズ」と称する挑発的な言動で人の深層を引きずり出すのが得意。

・その効果は穏やかな田口、老獪な高階院長や藤原看護師すら動揺・激怒させるほどで、挑発が過ぎて酒井や鳴海からは殴られる。

・自分にやれる事を最大限やる性格のようだ。

高階権太


・東城大学医学部付属病院院長で消化器腫瘍外科教授。

・田口にバチスタ・スキャンダルの予備調査を命じる。

・桐生を招聘し、「チーム・バチスタ」の結成に関わった張本人。

・会話を誘導し、詰将棋のように相手の逃げ場をなくしたり、院内の実力者の正論を論破するなど、強かな狸。

・自分の名前を嫌っている。「ゴンちゃん」と呼ばれていた。

藤原真琴


・61歳で、不定愁訴外来のただ一人の専任看護師。

・体は小柄で動作は緩慢に見えるが、必要なことはいつの間にか終わらせ、安定した印象を与えるベテラン。

・噂好きでその気になれば教授の首も飛ばせると噂される影の実力者。

・看護師達からの信望も厚い。

・「フジさん」と呼ばれているが「地雷原」という影のあだ名もある。

・定年退職後再任用を希望していたが、その政治力ゆえもて余されて不定愁訴外来への専任が決まる。

・高階との関係があり、チーム・バチスタの予備調査に田口を推薦する。

・マコリンと呼ばれる。

チーム・バチスタ

桐生恭一

・臓器統御外科助教授。

・「チーム・バチスタ」のリーダー、執刀医。

・高階の意向によって、フロリダ・サザンクロス心臓疾患専門病院から招聘される。

・論理的に構築した手術を行い、その手腕から「ミスター・パーフェクト」と称される。

・理路整然とした思考、患者を救うことへの清廉な志を持った非の打ち所の無い性格で、周囲を引き付ける魅力を持つ。

・田口の第一印象は「鷹」。

・鳴海の右手の腱を切ってしまう。

緑内障を患っており、手術に支障が出る。

アメリカに帰り、後進の育成にあたる。

鳴海涼


・37歳で、基礎病理学教室助教授、病理医。

・桐生の義弟で考えも桐生と似通る部分もある。

・かつて桐生とアメリカで外科医をしていたが、病理に興味を無理矢理移し病理医に転進。

・「ダブル・ステイン法」という術中診断法を確立させ、桐生と切除範囲を決める形で手術に参加している。

・気高さを感じさせる風貌や言動、言葉の端々に英語を交える語り口が特徴。

・白鳥曰く、パッシブフェーズとアクティブフェーズ両方を使いこなせるらしい。

・田口の第一印象は「シャム猫」。

・右手の腱をメスで切り裂かれたことにより、外科手術ができなくなる。

・桐生以上の才能を持つ。

垣谷雄次

・臓器統御外科講師、医局長、「チーム・バチスタ」第一助手。

・胸部大動脈瘤バイパス手術の専門家。

・桐生招聘以前は次期助教授になる予定だった。

・軽口を叩きつつもやや横柄に振る舞い、相手に威圧感を与えるタイプ。

・田口の第一印象は「カバ」。

・桐生の緑内障に気づく。

・無駄なことはしない主義。

酒井利樹

・臓器統御外科助手、「チーム・バチスタ」第二助手。

・チームに自ら志願して加入。

・以前執刀した患者が愚痴外来送りとなり、田口とは因縁がある。

・血気盛んだが自尊心が高く、桐生に心酔しているのに対し、垣谷の事は軽視している。

・田口の第一印象は「スピッツ」。

・実家は神経内科医院を開業している。

・大友と結婚。家業の医院を継ぐ予定。


氷室貢一郎

・麻酔科講師、「チーム・バチスタ」麻酔科医。

・物静かだが、感情を感じさせないような振る舞いで、田口には「死体のような男」と評される。

・喘息持ち。

・田口の第一印象は「紋白蝶」。

・エピドラに水酸化ナトリウムを入れて患者を殺害していた犯人。

羽場貴之

・臨床工学技士、「チーム・バチスタ」リスクマネジャーでもある。

・チーム最年長。

・人工心肺のスペシャリスト。

・コ・メディカルという職業柄、時間厳守を徹底する感覚の持ち主。

・田口の第一印象は「象」。

・真面目で正義感が強い人物。


大友直美

・手術室看護師主任。

・後輩の星野響子の後任として「チーム・バチスタ」に参加。

・彼女の加入以後、術死が始まる。

・噂や、加入後に始まった術死で自分が要因だと考えることもあり思い詰めているフリをする。

・田口の第一印象は「巻き貝」。

・気が強く、強かな一面もある。

・タバコを吸う。

・酒井と結婚。


星野響子

・2年目の手術室看護師。

・反射神経の良さを桐生に見込まれチームに参加するが、結婚を理由に寿退社する。24歳。

その他

黒崎誠一郎

・臓器統御外科教授。

・臓器統御外科のトップ、リスクマネジャーも務める。

・高階院長のライバルであり、消化器腫瘍外科出身の院長が臓器統御外科の人事に介入して桐生を招聘したことを内心腹に据えかねているが、その実力は認め、対外的には自分が招聘したかのようにアピールしている。

・目立ちたがり

兵藤勉

神経内科学教室助手、医局長。

・以前、田口を陰謀で陥れようとして失敗。

・院内の噂を嗅ぎ回っては吹聴しており、白鳥には「拡声器」と呼ばれている。

・上昇志向が強い。


有働

神経内科学教室教授。

・小心で院内政治には無頓着。


曳地均

・呼吸器内科学教室助教授。

・リスクマネジメント委員会委員長。

・周りが辟易するほどの何重否定も辞さない回りくどい言い回しで物事をぼやかすことに長けている。

松井

・総看護師長。

ミヒャエル

・フロリダのサザンクロス心臓疾患専門病院教授。

・桐生と鳴海を心配。

アガピ・アルノイド

南アフリカ、ノルガ共和国の反米ゲリラ少年兵。

・7歳で、アメリカで受け入れ拒否されたため東城大学医学部付属病院でバチスタ手術を受けることになる。

 

アクティブフェイズについて

・説得に分類される。

・アクティヴ・フェーズの際に使用するのは「オフェンシヴ・ヒアリング」

・「オフェンシヴ・ヒアリング」に対する防御策として使用するのが苦悩が原因の「シーアネモネトーク」か、秘密を守るための「スネイル・トーク」。

・相手の心臓を鷲摑みして、膿んでいる病巣にメスを突き立てる。
・未来を創るアクティヴ・フェーズ

・「火喰い鳥」かつ「ロジカル・モンスター」の白鳥が得意で使う。

アクティヴ・フェーズの極意

その1 「怒るか、怒らないか、ぎりぎりのところで持ちこたえる」
その2 「ガツンとやる前に、隠れる物陰を確保しておくこと」
その3 「用件が終了したら長居は禁物」
その4 「複数同時聴取で反射情報をからめ取れ」
その5 「身体を張って情報ゲット」
その6 「???」
その7 「反射消去法」
その8 「弱点を徹底的に攻めろ」
その9 「最後に信じられるのは自分だけ」
最終極意「すべての事象をありのままに見つめること」

 

 

パッシブフェーズ

・心理読影に分類される。

・パッシヴ・フェーズの際に使用するのは「ディフェンシヴ・トーク」。

・対象を自分の繭の中に取り込んでそこでゲロさせる。
・過去を看取るパッシヴ・フェーズ

・「氷姫」と呼ばれる姫宮や、主人公田口が得意で使う。白鳥によれば、田口の方が技術は高い。

 

パッシブとアクティブに対する個人的見解

パッシブフェーズは相手の話をじっくり聞いて相手をリラックスさせ、きちんと情報を聞き出す方法で、

アクティブフェーズは相手の心を揺さぶって、そこから本性を暴く方法のように感じた。

 

好きな一節

p362の「確かにおっしゃる通りです。でも数字には意味があります。それは一人の外科医の航跡。未来の外科医が目指す。輝ける銀嶺への道標なんです。」

説得と心理読影

 

感想

全員のキャラに欠点があり、桐生のような完璧人間にも光だけでなく、闇がある。リアリティがすごくあってすごく好き。基本的に筋道がしっかり立っており、納得できる内容だった。大学病院や医療の特殊な価値観があまり理解しにくかったが、楽しく読めた。作者が医療の現状を訴えているように感じた。